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鴎座俳句会&松田ひろむの広場

鴎座俳句会&松田ひろむの広場

ひろむ千日千句2011年

鴎座2011年1月号
北斎漫画
 
去年今年北斎漫画匂やかに
初山河濁世したたるばかりにて
初鴉母と添い寝をした声を
海鳴りはいつも龍馬や雑煮餅
盤石の御居処(おいど)なつかし鏡餅
見慣れない男と女初鏡
惚れ直す凡妻なれど初手水
初夢を屏風ヶ浦の眼差しを
荒川の初音ほろりと東(ひんがし)に
ふるさとのもんどりうって網始
お降りのやれやれ十日過ぎのもの
啄木が賢治が炭団坂冬芽
一葉の法真寺ここ辛夷の芽
ほろほろと石蕗の盛りに濡れ仏
民主党火襷の世の寒つづく
雪形の遊びごころに爺が岳
天地玄黄かほどに子猫やわらかく
にちにちの声を吹き込む久女の忌
指だけの恋人未満雪催
(2010年1月)

鴎座2011年2月号
福笑

福笑朝青龍といる時代
はかなげな斗馬(とうま)が太宰雪雲に
蒲団干す赤塚珈琲店二階
口開けしままに日暮るる雪催
恋の座の信濃のりんご冬囲い
タガログ語の一年生で寒雀
齢かこつ渚男といて雪虫
寒胡桃七十過ぎは口数も
傷つけしことに傷つき蓬餅
午後は翳る一石路村梅一輪
砂時計止まり粉雪牡丹雪
タバスコをひと振りします牡丹雪
幕間の思いゆさゆさ葱の花
悲しみの炎のぱっと吉書揚
薬喰華屋与兵衛は明るすぎ
帆を張りて春一番の曇り声
JOAK蛙合戦始まりに
愛宕山蛙の恋のつまびらか
実況中継蛙合戦どろどろに
(2010年2月)

鴎座2011年3月号
さぼうる

愛宕権現紅白梅は老い果てて
蛙合戦山上にあり宙にあり
俳諧の野に火を放つ龍太の忌
龍太忌のはじまりごくり水飲んで
あたたまらない移動休日啄木忌
沈丁花虚子全集のなかにいて
純金も純銀もなく春の雨
妻はひとり瀬戸の若布のふるふると
サクラガサイタ土佐の高知の母の忌に
蘇芳咲く駅前墓苑ちらちら手
砂町の果てに三年雀の子
げんげ田の誓子と清子休耕田
名曲喫茶あり「さぼうる」も菜の花も
本牧の淡谷のり子が望潮(しおまねき)
前抱きに亀の子左右に雀の子
「昭和枯れすすき」貧しさいまのさくら二分
リラ冷や明日という字の明るい日
さくら冷え軽くて王子お石さま 
開花予報B級グルメ楽しみに
(2010年3月)

鴎座2011年4月号 
想定外

葱の花さびしきものに食べる口
人体に影響はあり桜鯛
津波後のたんぽぽ「天罰」とはなにか
想定外を反省しても花の雲
被災地の神仏どこへ柳絮飛ぶ
地震酔いのつづきのさくら曖昧語
遊女の墓の越後信濃とちるさくら
彦次郎ならば目つぶし花吹雪
甘え子の一重瞼やピカソの忌
桜花賞ゆっくり歩くことばかり
秋色桜咲くと日本語タガログ語
姥ざくらかいなき一句浮かんでは
花冷えのふれてあやうきのどぼとけ
蚕豆のかたちのうふふ一の蔵
通し鴨遠州流はやや暗く
石棺に肉のあとかた松の芯
大川の海猫の間合いにシーベルト
真土山登頂記念花水木
ありがたや春大根が足からめ
(2011年4月)

鴎座2011年6月号
甘噛み

浮遊するとも海月の意志と川の意志
多佳子忌の隅田橋桁見上げつつ
ドラ汽笛あれば船旅若葉寒む
愛憎のほぐれほぐれて紫木蓮
甘噛みの猫と男と昼顔と
花十薬交替劇を間のあたり
愛咬や胡桃の部屋を空けておく
緑のカーテン蓮根銀座に四丁目
黒揚羽かの編集長の声聞かな
「指切った」七夕笹の秘めことば
ブブゼラの暑さもチーム八咫烏
かもめーる十代果てのワンピース
ストローハット二十歳の喉(のんど)やわらかき
桐の花少女が母になるときに
健やかに老いたいという油蝉
竹夫人獣になれといわれても
トマトジュースよしなしごとに肥り肉(じし)
梶ヶ谷に葛の花出て電車出て
ほうたるを螢と書けば燃えはじむ
(2010年6月)


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